【書評/体験】『奉納百景』を読んで穴守稲荷に行ってきた!
※これはPR記事です
こんにちは。
Proof Readerライターの坪内悟です。
錆びたハサミ、釘を打った男根、そして女性の髪の毛・・・
神社やお寺を巡っていると、「なんでこれを?」「なんでこんな願いを?」と思うような不思議な奉納物や、不可解な絵馬に遭遇したことありませんか?
そんな奉納物を集めたのがこの本、
小嶋 独観:著 (駒草出版刊)
どうやら、なぜそれが奉納物になっているかにはいろいろ理由があるようで・・・
たとえば
「針金でぐるぐる巻きにされたハサミ」
なんかは、
“切れない”というところから[縁結び]祈願なんだそう。(福島県:橋場のばんば)
他にも、
・「女性の髪の毛」は、[病気平癒]
・「花嫁人形」は、[幼年で亡くなった息子へ]
・「御神木に打ち付けた鎌」は、[子宝祈願]
・「朱塗りの猿」は、[安産祈願]
・「ハシゴ」は、[おねしょ封じ]
・「紙で作ったスマホ」は、[祖霊送り]
・・・なんて願いが込められているそうですけど・・・
呪いっぽくて、なんだかちょっと怖い・・・!
というわけで、本当に恐ろしいところなのか?を確かめに、
『奉納百景』に掲載されているスポットに実際に行ってきました!
向かったのは、羽田空港に近い
『奉納百景』によれば、ここの奉納物は
激動の歴史など感じさせない静かな佇まいの境内だが、奥の宮の社の内部に見てギョッとした。そこには数えきれないほどのミニ鳥居がうず高く積み上げられていたのだ。
(『奉納百景 神様にどうしても伝えたい願い』P190より)
・・・ということらしいですね。
さて、2019年8月某日。
降り立ったのは、京急電鉄「穴守稲荷駅」。
ネットによれば、この駅は駅名がコロコロ変わっているみたい。
開業当時の「穴守駅」が→「羽田駅」→「稲荷橋駅」(現在の羽田空港の場所に戦前まで旧穴守稲荷があり、その参道の橋があったため)→「穴守稲荷駅」(戦後、穴守稲荷神社がここに移転してきたため)と変わっているとのこと。
でも実はもう1つ、駅名があるんですよ。
2013(平成25)年から京急電鉄は副駅名称広告を販売していて、この穴守稲荷駅には「ヤマトグループ羽田クロノゲート前」という“副駅名”がつけられたんですって。
さすが“お稲荷さんの街”とだけあって、改札を出るとさっそく、キツネ様のキャラ「コンちゃん」の石像もあります。
こりゃ、期待が高まりますね!
駅を降りたら突き当りを左に。
羽田空港が近いっていうのに、街はほんとにのんびりしていて、下町風情が漂います。
ローソンから郵便局に向かう途中にある角を右に曲がると、参道らしき道に。
駅から徒歩約3分で、着きました!
境内に入ってみると・・・
ヒィィィィッ!
大勢のキツネがこちらを見つめます。
ちょっとビビりますよね・・・
上の写真の「狐塚」の他にも、この穴守稲荷神社にはホントにいたるところにキツネ、キツネ、キツネ・・・
ものっすごいたくさんのおキツネ様がいらっしゃって、圧倒されます。
おキツネ様たちにきちんとご挨拶してから、お目当てのものを探しに。
狐塚の裏手に回ると、すぐ左にあるのが「神楽殿」。
豆まきの節分と初午、そして例大祭の年3回開放され、神様に舞を奉納する場所です。例大祭では「狐舞」が行われるそう。
あれ・・・?
ちょっと奇妙なところに気づきませんでしたか?
・・・そーっと近づいてみましょう。
ほら、縁の下に・・・・!
大量のミニ鳥居が・・・!
『奉納百景』のとおりだ!
生で見ると、かなり鳥肌立ちますよね・・・
後日ネットで調べてみると、このミニ鳥居は、近所で売られている神棚用のものみたい。
稲荷様を祭る家では神棚の前に小さな鳥居を置くそうで、
願いが叶ったり古くなったりしたら、その系列の神社に奉納するんだそうです。
『奉納百景』には
その土地に根付いた稲荷の社を人間の勝手で移したりないがしろにすると、たちどころに災厄がふりかかる(祟る)――― 。そんな伝承は、「江戸に多いもの、伊勢屋稲荷に犬の糞」と歌われた江戸の市中ではよく語られていたことである。
<中略>
ここでは信仰が今も生きている。
(『奉納百景 神様にどうしても伝えたい願い』P190より)
とあります。なるほどなるほど。
私もちょっとビビってしまいましたが、この穴守稲荷はそんな怖いとこじゃないんですよ♪
神楽殿をもう一度見てみると、
上の方に寄付者奉名板(支援者の名前を記した看板)があって・・・
往年のスター「宝田明」さんや「清川虹子」さん、そして(何代目かはわかりませんけど)「坂東八十助」さんや「柳家小さん」師匠の名前も!
そう、ここは芸能や商売繁盛の神様としても有名なんですって。
『奉納百景』には
「穴守」とは、大津波による堤防の決壊を防ぐ守護神(堤防に穴が開かないよう守護する)を意味する神号だったのだ。
やがて遊興地として発展すると、当社は花街の女性たちの「穴守り」としても信仰された。さらに現代では、競輪競馬の大穴を狙う者たちも詣でるようになったという。(『奉納百景 神様にどうしても伝えたい願い』P190より)
・・・ともあります。
まぁ、芸能でも商売でも、大穴を1発どーんと当てたいですもんね。
ん?・・・でも、たしか『奉納百景』には、
無数のミニ鳥居は「奥の宮の内部」にあるって書いてあったはずなんですけど・・・?
そう、実は穴守稲荷神社は現在境内整備工事中。
(2020(令和2)年3月竣工予定)
タイミング悪かったなぁ・・・(泣)
「本殿」もこんな感じ。
これも観たかった、たくさんの“鳥居のトンネル”も束ねられちゃって・・・
覆われた白いカバーから、キツネさんも顔を出します。
(あれがこの神社で有名な「狛犬」ならぬ「狛狐」なのかしら・・・?)
ということで、奥之宮は仮殿にてご参拝。
ガラス戸を開いて中に入ると・・・
中には、様々なご利益をもった、お稲荷様がならんでいます。
足元を見ると、網のついた箱が。
開けてみると・・・
砂だ!!!
穴守稲荷の公式サイトに、この砂の秘密が書かれていました。
むかしむかし、羽田浦の要島に一人のおじいさんが住んでいた。要島は干拓でできた島なので、堤防で固められていた。しかし、津波が襲い堤防が破られることがしばしばあったので、祠(ほこら)を構えて稲荷大神をお迎すると、風や波の害がやんだため、ここを『穴守稲荷』と呼ぶようになった。
あるとき、おじいさんが漁から帰ってカゴを覗くものの釣れた魚はなく、入っているのは湿った砂だけ。次の日も、また次の日も大漁だったはずが、同じようにカゴの中には魚はなく、湿った砂ばかり。これを怪しく思ったおじいさんは、村の衆にそのことを話してみた。すると村の衆は「そりゃ狐のしわざだ!」と、穴守稲荷の社を囲み、狐を捕まえてこらしめようとしたのだが・・・おじいさんはその狐を許して逃がしてやったのだった。
するとその後、おじいさんが漁に出るたびに大量になり、カゴにはたくさんの魚と、ちょっとの湿った砂が入っていた。この砂を庭にまいたところ、たちまち客が押し寄せ、おじいさんは大金持ちになった。それゆえ、おじいさんにあやかって、この砂で福を招く「徳」を得ようと、穴守の砂を求める人があちこちから訪ねてくるようになったという。
(※穴守稲荷公式サイトの説明をライター坪内が現代語訳しました)
この砂は『招福砂』と呼ばれ、持ち帰って家にまくと、願いが叶うそうですぞ。
<お砂のまき方>
●商・工・農・漁業・家内安全の招福には玄関入り口に
●病気平癒の場合は床の下に
●災・厄・禍除降の場合は其の方向へ
●新築・増改築には敷地の中心へ
~其の他特殊な場合には神社にお尋ね下さい(穴守稲荷公式サイトより引用)
奥之宮には上のような備え付けの封筒もありますが、
「そんな魔法の砂なら撒くだけじゃなく、いつも自分で身につけていたい!」なんて人のために、お守りにもなっています。
色ごとにご利益が違うらしく、著者は「心願成就」の赤をゲット♪
(ちなみに青は「厄除け開運」。白は「身体健全」、黄色は「金運招福」、緑は「学業成就」)
場所がら、「旅行安全守」もありました!
空・陸・海ってどこ行ってもOKですねw
さて、実は私、『奉納百景』を読む前からこの穴守稲荷神社にずっと来たいと思ってまして・・・それはこれが欲しかったからなんです。
御朱印帳!
前から御朱印集めを始めようと思っていたんですが、やっぱりそれにはお気に入りのデザインの御朱印帳がいいですよね。
ネットで見かけたこの穴守稲荷神社の御朱印帳がずーーーーっと欲しくて♪
というわけで、ありがたくゲット!
荷物を運ぶおキツネ様たち、かわいくないですか??
ちなみにこちらはスペシャルバージョン。
神社に奉賛するといただけるそうで、一般頒布の予定はないそうです。
参拝も無事終了。
穴守稲荷神社には境内整備の工事が終わってから、また来てみたいです。
そういえば『奉納百景』では、旧羽田空港ターミナルにあった「巨大鳥居」にもちょっとふれていました。作者の神社仏閣ライターの小嶋 独観(こじま どっかん)さんの世代では、オカルト話として有名だったそうなので、ちょっとネットで調べてみると・・・
戦後すぐ、GHQが軍用地拡張のために羽田を接収し、撤去を余儀なくされた旧穴森稲荷と大鳥居。
でもその作業の際、大鳥居から米兵たちが落下して死んだり、鳥居にかけたロープが切れて作業員が怪我をしたんですって。また、原因不明の病人までも続出して、「これは穴守様の祟りだ!!」と工事は中止に。
こうして、大鳥居だけが旧空港ターミナルビル前の駐車場に鎮座する形となったんだそう。さらに1982(昭和57)年、空港拡張計画が持ち上がって再びこの赤鳥居の撤去が決定すると、航空事故が頻発。結果、鳥居をそのまま残した状態で拡張工事は進められていったといいます。
この都市伝説がホントかどうかはわかりませんが、穴守稲荷神社から徒歩8分ほどとのことなので、行ってみましょう。
では穴守稲荷神社を東側に出て、南下。
大きな道路に突き当ったら左へ。
(「カサブランカ」という古いスナックがある交差点です)
「弁天橋交差点」まで来ると・・・・
見えました!
(画像、ちょっと右めの橋の向こうです)
橋の袂から見ると、こんな感じです。
海辺にポツンと鳥居だけが建っています。
橋を渡り切って、近づいてみると・・・
どーーーーーんっ!
やっぱりデカいです。
1999(平成11)年に空港拡張工事が持ち上がった際には、元住民などから「大鳥居は残してくれ」と声が上がり、「撤去」ではなく「移転」に。
こうしてようやく現在の場所になったんだそう。(この時は特に怖いことは何も起こらなかったと言われています)
そして現在では、そんな“祟りの場所”というよりむしろ、パワースポット的な扱いになっているみたいですね。
実はここ、全長50キロにも及ぶ『多摩川サイクリングロード』の起点(または終点:羽田⇔羽木間)になっていることもあり、ロードレーサーが結構集まっていました。
青空のもとにそびえたつ真っ赤な大鳥居と、そこに掲げられた『平和』の文字。
パワーを感じて、明るい未来を描きたいものですね。
さて、話は戻りますが、
ウェブサイト「珍寺大道場」道場主で、神社仏閣ライターの小嶋 独観(こじま どっかん)さんが、そんな不思議な奉納物を長年にわたって収集・調査したこの本
小嶋 独観:著 (駒草出版刊)
によれば、古より日本人は
モノ(呪物)に秘められた象徴性や神秘性を介すことで、人間の重い計らいを超えた神の領域とアクセスを図ろうとしてきた
(『奉納百景 神様にどうしても伝えたい願い』まえがきより)
といいます。
今回参拝した穴守稲荷神社を始め、その地方独特の信仰観には本当に驚きますよね。
しかしこの本を読むとそれだけでなく、日本における“信仰の多様性”も感じられ、日本文化の奥深さを知ることもできると思います。
あなたもぜひ、この本に載った神社仏閣に、実際に足を運んでみてはいかがでしょうか?
<書籍データ>
ジャンル:サブカルチャ―
タイトル:『奉納百景 神様にどうしても伝えたい願い』
著者:小嶋 独観
出版:駒草出版
刊行年月:2018年11月
価格:1,650円(税込)
頁数:232ページ
詳しくはこちら(駒草出版)
※この取材は、2019年8月に行ったものです。みなさんが行く頃には、境内の整備工事も終わっているかもしれません。