【体験】「ハギス」はいかが?~スコットランドの名物料理を作ってみました~
「スコットランド」と聞いて、まず思い浮かぶのはなんでしょう?タータンチェック?バグパイプ?お酒好きなら「スコッチ」か、ラグビー好きなら「グレイグ・レイドロー」あたりでしょうか。
では、料理はどうでしょう?
そもそもスコットランドは、料理がまずいというイメージが定着しているイギリス(グレートブリテンおよび北アイルランド連合王国)の一国なので、美食の国というイメージはないかもしれません。
実際のところ、日本と同じように、周りを海に囲まれているイギリス、中でもスコットランドは海産物が豊富で、バケツいっぱいに入ったムール貝や牡蠣、脂がのったサーモンや鯖などが手軽にいただけるのですが、これらは、日本の「寿司・天ぷら・ラーメン」のように誰もが知る、その国に行ったら必ず食べるというような名物料理とは少し違う気がします。
日本における知名度は若干低いものの、スコットランドを代表する料理といえば、やはり「ハギス」(Haggis)でしょう。ハギスは、お祝いの席や国民的行事のバーンズ・ナイト(スコットランド出身の詩人ロバート・バーンズの生誕祭)で必ず供される、スコットランド人のソウルフード的な料理です。
ハギスは、簡単にいえば、「羊の内臓を胃袋に詰めて茹でた料理」です。これを聞いて、美味しそう!ぜひ食べてみたい!と思う人は、残念ながらそう多くはないでしょう。まして、自分で料理してまで食べたいと思うのは、さらに少数派かもしれません。
スコットランドでも、材料から手作りする家庭は珍しく、スーパーで缶詰や茹でるだけの半調理品を買ったり、肉屋でお惣菜として買ったりするのが一般的だそうで、スコットランド人の知り合いに、「ハギスを作りたい」と言ったところ、「ハギスは作るものじゃなくて茹でるものだろ?」と返されました。
スーパーの棚に並ぶハギス
長年、一度は自分でハギスを作ってみたいと考えていたのですが、詰めて茹でるだけとはいえ、そもそも日本では材料が簡単に揃わず、手作りしたくてもできないのが現実でした。
ところが、そんな私の夢を叶えてくれる、手作りのハギスキットが神楽坂にあるスコティッシュパブ「The Royal Scotsman」から発売されました。
これまでに何度かスコットランドや日本でハギスを食べる機会がありましたが、お店によってかなり味に違いがあることがわかりました。食肉販売業の営業許可を持ち、自称「日本一ハギスを作っている」小貫氏がオーナーをつとめる「The Royal Scotsman」のハギスは、かなり好みの味。そして、出来立て熱々のハギスが食べられるのも手作りならではの貴重な機会。迷うことなく注文しました。
数日後、届いたキットには、主な材料となるダイスカットされたタン、心臓、肺、レバーなどの羊の内臓肉、ラムファット(ダイス状の羊脂)、ケーシング(胃袋の代わりとなる人工のもの)が入っており、これらとは別に、オートミール、セロリ、玉ねぎ、塩、黒コショウを用意。また、がんばって包丁で刻めないことはありませんが、材料をミンチ状にするのに、フードプロセッサもあると便利です。
これで、準備万端。はじめてのハギス作りが始まりましたが、「お母さん、今日の晩御飯はハギスにしてね!」と言われても、そうはいきません。
なぜなら、工程は二日間に渡るから。
まずは1日目
ハギスの主材料となる、羊の内臓肉を茹でます。水から火にかけ、沸騰したら一回アクごとお湯を捨て、再び水から茹でて、沸騰したら弱火にして約15分。その際、臭み消しにセロリの葉も一緒に茹でちゃいました。茹で上がったら、ざるにあけて荒熱を取り、冷えたら冷蔵庫で一晩保管します。
まずは羊の内臓肉を茹でる
茹で上がったら水を切る
続いて2日目
冷蔵庫で冷やしておいた羊の内臓肉を取り出したら、フードプロセッサにかけて微塵切りにします。続いて、玉ねぎとセロリも微塵切りにしたら、オートミール、ラムファットとともにすべての材料をボウルに入れ、塩、コショウを加えてよく混ぜます。混ざったら、ぬるま湯で温めて柔らかくしておいたケーシングに詰めていきます。我が家にある一番大きな鍋でも一度に入りきらなかったので、ケーシングを半分に切って、半量ずつ作ることにしました。
初めてなので、詰め加減がよくわかりませんでしたが、Youtubeで小貫氏直伝の作り方を見ながらギューギュー押し込みました。
一晩冷蔵庫で冷やした羊の内臓肉を取り出してフードプロセッサへ
ケーシングに詰め終わったら、しっかりと結んで、沸かしたお湯の中に投入。後は弱火にして約40分茹でます。
ケーシングに詰めて茹でたら完成まであと少し
40分後、鍋から取り出したら、ついにハギスの完成です。茹で上がったハギスにナイフを入れると、肉汁とともに中味が溢れ出てきます。
付け合わせは定番のマッシュポテト。お好みでハギスにはスコッチウィスキーを振りかけて食べるのですが、まずはそのままで。途中でスコッチウィスキーをかければ、驚くような味変が楽しめます。
鼻に抜ける羊とスコッチの香りは、本場のハギス!気分はスコットランド!
見た目は完璧なハギスがついに完成!
マッシュポテトとスコッチを添えて
レストランではメインディッシュとして出されるハギスですが、私の感覚ではどちらかといえば珍味や酒の肴に近く、ハギスだけでお腹をいっぱいにするのはいささかハード。
でも全部美味しく食べたいということで、ハギスとマッシュポテトで作ったコロッケ「ハギスボール」やパンにハギスとチーズを乗せて焼いた「ハギスサンド」も作ってみました。これだと、羊や内臓肉は苦手という方にも食べやすいかもしれません。
ハギスボール
ハギスサンド
初めて作ったとは思えないほどの本格的なハギスができて大満足でしたが、改めて材料を見ると、とてもシンプルで素材の味が生きた料理だということがわかりました。
内臓肉の配分、ナツメグやコリアンダーといった加える香辛料の違いなどによって、それぞれのお店や家庭の味が生まれ、スコットランド中で愛されているのだと思います。
いかがですか?「ハギス」、食べてみたくなりません?
まずはお店で試すもよし、気に入ったらぜひ手作りしてみてくださいね。
では、ハギスとともに
「Slàinte mhath(スランジバー)!」(ゲール語で「乾杯」)