どんな漢字かチンプンカンプン!?~意味なんて関係ない“当て字”
こんにちは。『ダンラク』ライターの坪内悟です。
「話している言葉や内容がまったくわからないこと」を
『チンプンカンプン』っていいますが・・・
その『チンプンカンプン』って、
漢字でどう書くか知っていますか?
「珍紛漢紛」
「珍糞漢糞」
「陳奮翰奮」
などなど・・・
・・・どれも正解ですが、どれも正解じゃないんです。
というのも一説には、この『チンプンカンプン』という言葉は
「听不懂,看不懂」(ティンプドン、カンブドン = 聞いてわからない、見てわからない)
という中国語の音を真似して生まれたといわれているから。
他にも、
江戸時代に、儒教者が使う難しい「漢語」の響きを真似してバカにした造語だとか、
日本に来たオランダ人のさっぱりわからない言葉が、「チンプンカン」と聞こえたからとか、
いろいろな語源の説があるといいます。
とにかく、どれにも共通するのは
「音の響きから作った熟語」。
つまり、先ほどの漢字はどれも『当て字』なんです。
長年使われているので、どれも正解とも言えるのですが、
「チンプンカンプン」の“本来の正しい漢字”は、ないんですね。
※ちなみにチンプンカンプンは、もともと『ちんぷんかん』という言葉で、
終わりの『ぷん』はリズムを整えるために追加されたと言われています。
で、この『当て字』を辞書で調べてみると・・・
【当て字】
漢字の本来の意味に関係なく、音や訓を勝手にあてはめた漢字。
また、漢字のそうした使い方のこと。
・・・とあります。
この例として一番わかりやすいのが、
国名です。
日本語ではない発音に、むりやり漢字を当てはめたわけです。
アメリカ = 『亜米利加』(ア・こメ・リ・カ)
イタリア(イタリー) = 『伊太利』(イ・タ・リ)
インド = 『印度』(イン・ド)
ドイツ = 『独逸』(ドく・イツ)
フランス(フランセ) = 『仏蘭西』(フつ・ラン・せい)
ウルグアイ = 『宇柳貝』(ウ・ル・ガイ)
・・・最後のはかなり強引だろw
新聞などで、それぞれを『米国』や『伊』『印』『独』『仏』などと書くのは、
ここからきているんですね。
でも・・・なんだか、明治・大正・昭和の古くさ~い感じがしますよね?
ところが、新しいイメージのこんな言葉にも・・・
『カタログ』
これにはこんな漢字が当てられています。
・・・もはや、ダジャレみたいですけど、
なぜか漢字そのものの意味ともピッタリきちゃったのが不思議ですねw
それから、
なんだか『ちんぷんかんぷん』と似たイメージのものとして、
が挙げられます。
この『無茶』は
「まったく手の加わっていない自然なもの」という意味の仏教用語『無作(むさ)』が元。
この「作」と同じ「サ」の響きを持つ漢字、「茶」が当てられて
『無茶』となったといわれています。
そして後半の『苦茶』はやっぱり、
語調をあわせるために追加されたとされているんですって。
こんな感じで、
“難しい仏教用語から漢字を拝借してくる”パターンの当て字は他にも。
たとえば、こちら。
これ、読めます?
おい、誰だ『ニドラン』って読んだのは・・!!
(from ポケモン)
こちら、実はこう読むんです。
「とにかく」
そう、あの
「何はともあれ。ともかく。いずれにしても。」という意味の副詞です。
あなたもよく使うでしょ?
でも、なんで ”ウサギにツノ” なの・・・?
これは仏教用語の
「兎角亀毛」(とかくきもう)
からと考えられています。
でも『兎角亀毛』は、
兎(ウサギ)に角があったり、亀に毛が生えていないように
現実にはあり得ないものの喩えとして使われた言葉、
また、実際に無いものをあるとすることを言ったもの
なんだそう。
・・・ということで、意味的には全く関連はなく、
音だけを勝手に借りたんです。
ちなみに『兎に角』という当て字が広まったのは、
あの「元・千円おじさん」こと
夏目漱石が多く用いたことからなんだそう。
他にも漱石が流行らせた当て字としては、
非道い(ひどい)
浪漫(ロマン)
肩が凝る(こる)
沢山(たくさん)
・・・などが有名だそうで。
“当て字好き”の夏目漱石。
もしかして元ヤンなのかしら・・・?
※記事中、『当て字』は
「漢字の字義を無視し、読み方のみを考慮して漢字を当てる」という狭義で使用していますが、
広義には逆の「漢字の読み方を無視し、字義のみを考慮して漢字を当てる」という場合もあります。